親友の白鳥宏明さんに教えられて、『丁稚のすすめ』という本を読んでみました。
著者の秋山木工の秋山利輝さんのことはテレビで観たことがあり、知っていました。
「職人は技術より人間性が大事」という秋山さんは、人間性を育てるには厳しい丁稚生活が必要と考え、入社したら男も女も丸坊主になり、携帯電話と恋愛は禁止、家族への連絡は手紙を書き、毎日、大判のスケッチブックに1日のレポートを書き、それを先輩や社長に見てもらって指導を受けるという「丁稚生活」を4年間続けるそうです。
『丁稚』という言葉は死語になりつつありますが、私にとっては「丁稚奉公」という言葉は懐かしい響きがあります。私の父は「見習修行」「丁稚奉公」という精神修行が大好きで、私が大学を卒業して足利屋を継ぐと決めたときに、厳しく仕事を教えれくれるところで2~3年丁稚奉公をしてこいと言われました。宇都宮、高崎など数軒の候補の中で一番厳しいといわれた高崎の高橋本店に入れてもらい、1年間、住み込みで社長家族と寝食を共にした経験が今の自分の仕事の原点になっています。社長の家族は敬虔なクリスチャンで毎朝、住込み店員も全員いっしょに賛美歌を歌い、聖書の一節を読みました。休みはほとんどありませんでしたが苦ではありませんでした。
2年の予定でしたが、大間々に大型店が出店することになり、「今、帰ったほうが勉強になる」と社長に言われ1年で丁稚奉公が終わりました。そのときに私の父が高橋社長に「せめて3ヶ月、お礼奉公をさせてください」と言ったのを覚えています。父の頭の中でも、丁稚奉公とお礼奉公はセットになっていたようです。結局それも社長に辞退されました。丁稚奉公最後の日に社長から色紙をいただきました。「祈れ働け 毎日の仕事は祈りの翼によって神様に運ばれて行く 働くことは祈りである」と書かれていました。あれから35年たった今でもその色紙の言葉を読んで1日がはじまります。