本棚の隅に「こころの作法」という文庫本がありました。しばらく前に買ってそのままになっていた本でした。
読んでみると実に興味深い内容でした。目次をみて、最後の第7章「眼差しの記憶」から読み始めて、第1章にもどり、もう一度最後まで読みました。第7章で著者の山折哲雄さんは山本周五郎と司馬遼太郎の作品について、「山本周五郎の身上とするところは、人情の機微に分け入り、市井のすみずみにまで神経をとどかせる、きめ細かなストーリー作りにあるといっていいだろう。それにたいして司馬遼太郎の得意とするところは、屈曲する歴史の流れを鳥瞰し、そこに登場する人物たちの行動を円転自在活躍させる点にある。あえて対照させていえば、山本周五郎には沈着冷静な目線の低さを、司馬遼太郎には豪放闊達な志の高さを感ずる」と書いていました。第6章では山本周五郎の「日本婦道記」の「不断草」という短編の話が紹介されていました。「不断草」は以前読んで感動の涙を流し、何度か読み返した話でした。
山本周五郎の本は「樅ノ木は残った」や「雨あがる」、「日本婦道記」など、何冊か読んできましたが、今年は特に山本周五郎の作品を中心に読んでみることに決めました。