母の実家である前橋の「松屋」という和菓子屋を継いでいる従兄から、アップルパイや最中などといっしょに、「古今女流名歌選集」という本が送られてきました。本の裏には母の筆跡で「中野」と書かれており、女学校時代の写真も数枚挟んでありました。従兄の添え書きによれば、母が前橋高等女学校時代に愛読していた本のようです。
この本は80数年前に出版された本で、2,500年前から現代(昭和初期)までの名歌約670首が収められています。
色あせたページをめくっているうちに、1ヶ所だけページの耳を折った跡がありました。そのページには樋口一葉の歌が載っていました。
水の上に跡もとゞめぬうたかたの泡にむすべる我が命かな
樋口一葉は、24歳で肺結核でこの世を去っています。この歌は一葉が死を覚悟したころに詠んだ歌だったのかもしれません。当時13~14歳だった母はこの歌にどんな思いを抱いていたのでしょう。
母も私を産んだ直後に33歳の若さで亡くなりました。
もしかしたら、母が亡くなる時、この歌とこの歌の情景を思い浮かべていたのかもしれないと思いました。
水の上に跡もとゞめぬうたかたの泡にむすべる我が命かな 一葉